2019/06/20更新しました。
アパートや一軒家を貸すオーナーはお金持ちのイメージを、私は持っています。
自宅のほかに不動産を持って、そこから家賃収入を上げているのですから、左うちわで悠々自適でしょう、と。
少しでも安い食材をさがしたあげく、里山へフキノトウなど山菜を摘みに行くようなボンビーな私とは全然違うはずです。
でも、あるアパート経営者は「ちっとも儲からない!」と断言して、私をじろりとにらみました。
まるで、私が部屋を借りて迷惑をかけたかのように憎々しげな表情を一瞬したので、ちょっと引きましたね。
70歳になるそのアパート経営者は、こう話しました。
住宅ローンより高い金利で苦労してアパートを建て、ローンが終わるころには物件が古くなる、そうなると若い人はまず入居しないそうです。
「すると、何が起こると思う? もうね、大変だよ」
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入居者はワケあり!?
築30年を越すと、水回りや外壁等も傷んできます。
定年後の暮らしの足しに、先祖代々の土地に建てたアパートなので、オーナーには愛着がありました。
こつこつと修繕して家賃を3万円前後に下げ、空き部屋が出れば、新たな入居者を募集。家賃が安いので、部屋を借りたい人はいるそうです。
「なるべく問題を起こさない、ごくふつうの人に借りてほしいんだけど、これがなかなかうまくいかないんだな」
- しばらくするとペットを飼いだす
- 仕事をしているはずなのに、昼間から酒浸り
- アパートの部屋をゴミ屋敷にする
- 入居者が亡くなったので、身内に連絡したが遺品も遺骨も引き取りたくないと言う。
入居者の数だけ人生模様があります。
ペットは禁止なのに猫を数匹飼い、畳やふすまをぼろぼろにしても平然と生活する中年女性。
このケースは退去時に、部屋を借りた際の保証人が修繕費を払いました。
あるいは近所のゴミ集積場から他人の捨てたモノを拾い、扉の前に積み上げて置くのが習慣になっている主婦。
この人は精神的な病があって、同居人が撤去してもまた繰り返し、いまも入居中。
そして、独身だと亡くなってしばらくしてから見つかるケースもあったそうです。
原状回復の費用でもめる
そのオーナーさんは高齢者だからといって、部屋を貸さないわけではありません。
お身内が同じ市内か近隣の町村にいて、ちょくちょく訪問があるケースはむしろ歓迎すると言いました。
問題となるのは却って50代や60代で、年齢的には問題がなさそうな人。
- 夜警の仕事をしている
- IT関連の会社に勤めている
- パートをしている
しかし、現役世代でも数年以上を暮らすうちに病気になって、仕事を続けることができなくなる。
生活保護の申請をして受理されると、家賃補助も出ますから、そこまではいいのだそうです。
その後、それまでの行いが良くなかったのか、親子、兄弟の縁が切れるような人もいる。
食生活が乱れ、アルコールや清涼飲料水の飲み過ぎで健康状態が悪化し、だれにも看取られずに亡くなる。
そういう入居者は部屋の状態がすさまじく、原状回復が必要だが、親戚の誰に連絡しても拒否されてしまう。
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オーナーが自腹を切るしかない
「子どもに連絡しても、引き取ってくれないんだな。子どもたっていい大人だけれど、自分も病気で金がないからすべての遺産を放棄するって。負の遺産しかないことを知っているから、服の一枚もいらないって」
もめたあげくにオーナーが業者に頼んで遺品を撤去したり、タバコのヤニで黄ばんだクロスを張り替えたり、あるいは孤立死であったときは床や床下、あるいは階下の天井も工事することがあるとのこと。
オーナーが自腹を切ると経営は大赤字。
しかも年々、そういう心配が増えるため経費がふくらみ、オーナー自身の老後に影響がでそうだと、がっくりと肩を落として語ったのです。
まとめ
前に娘が部屋を退去するとき、修繕費を求められた話を書きました。
今回、地元の方から話を聞いて、アパート経営もそれほど楽ではないことが解かりました。
物件が古くなると、家賃を下げざるえない。地方でも無縁社会が広がっているため、オーナーが自腹を切って、亡くなった入居者の遺品整理や部屋の現状回復を行うことがあるそうです。
モノの始末はたいへん。
日頃から人には迷惑をかけないように暮らさなきゃと、改めて考えた次第です。
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