2022/04/14更新しました。
私には20代後半の子どもが2人います。
仕事に就いて自立していますが、なにか問題が発生したとき、私が少し意見を言うと、「母さんはうるさい」「母さんは引っ込んでいて」と、返事が来ます。
落ち込んだ私が手に取った本が、信田さよ子さんの『家族のゆくえは金しだい』。
この本に取り上げられているのは、引きこもりの息子や娘を持ったご家庭や、友人に多額のお金を貸してしまう公務員など。
本の内容と、成人した子どもの付き合い方をどうしたらいいか、私の考えをお伝えします。
スポンサーリンク
悩みを抱えた家族
本によると、悩む家族のキーワードのひとつが「お金」。
引きこもりの中年無職を抱えた年金暮らしの親と聞けば、その葛藤は想像がつくでしょう。
愛やきずなという美しい幻想にとりつかれてきた日本の家族像。
しかし、実態はかじる親のすねがあればこそ、中年無職者は飢えることなく生存が可能となっているわけです。
罪悪感が行為を快楽にする心理
ギャンブル依存症や買い物依存症は、なぜどんどんお金を使うのか?
お金を使うことが楽しいから?
本を書いた信田さんは、背徳感や負の感情があればこそ、快楽は激しく強いと断言。
不倫における情事の快楽が、夫婦間のそれよりはるかに強いことに似て、いけないことだと知りつつ溺れる感情が依存の沼にはまらせると、そんなふうに解説しています。
ストレス
ある公務員の男性は同性の知人に1000万円もお金を貸していますが、虚無感が胸底にあります。
子どもの頃に親の離婚を経験し、自分を見下している父との同居によるストレス。
そこから、「こんな自分でも役に立っている」というゆがんだ達成感が、知人の無心を許してしまうというのです。
傍から見ていると「そんなバカな」と思うのですが、病んでいますからそうでもしないと、精神の均衡を保てないのでしょう。
愛情という名の支配
本には、ひとり息子を溺愛する裕福な母親も登場します。
大学生になった息子は、「パパを超えなきゃだめよ」を繰り返す母親にうんざりし、家を出ました。
好きな映画の仕事に就き、恋人の妊娠がわかってから、両親と和解。
すると母親はすぐ、息子夫婦にマンションを買い与え、自分たちも上の階の部屋を買い、引っ越し。
嫁と母親は仲がよく育児を助け合うが、そのマンションへ帰る足取りが重くなる息子です。
クモの糸にからめとられたように、母の愛情が重すぎて気が滅入る。
実の親子でも相性の悪いケースがあることや、緊張をはらむ関係があることを教えてくれました。
お金を与えすぎて、自立できない子
本書ではお金を持っている親世代が、引きこもりの子どもにどうお金を渡さないかということにけっこうページを割いています。
豊かな親御さんが多いのでしょう。
ただ、欧州では親から金銭の援助を受けられない若者がホームレスとなる例が多く、頃合いがむずかしいとも。
スポンサーリンク
親の心配は余計なこと?
私の悩みのひとつは、娘の健康です。
彼女は現在マレーシアに滞在していますが、病気になったので帰国するはずでした。
でも、日本に住民票を戻して医療を受けるより、加入している海外の医療保険を利用して現地で手術を受けたほうが良いという話で、そのように。
「こっちで一番、医療技術の高い病院だから」と、本人は言いましたが、やはりとても心配でした。
娘のそばに駆け付けるべきですが、私は英語が不得意なので、ひとりで渡航できません。
勤め先の日本人オーナーや日本人の友人に恵まれて、とても親身にしていただきました。有難いことです。
ただ、内視鏡の手術だったのに、止血はうまくいかなくて貧血になったとのこと。
そういうことを後から聞いて、心配が募りました。
「やっぱり帰国したほうが良かったのに。傷が癒えたら、日本に帰ってきて」とお願いのラインメッセージ。
それが娘にはうるさかったらしいのです。
術後の傷の痛みに加えて、母親から何度も問い合わせがきて、辛かったそうで……。
連絡が途絶えてしまいました。下の娘のところにはライン電話をしているみたいですが。
そして、下の娘によると「姉ちゃんはけっこう元気になったよ。明日から仕事だって」と。
帰国する気持ちもさらさらないようです。
大切なのは本人の意志であることを前に記事にしました。
成人した子どもとのつきあい方も、思春期のころと同じように難しいものがあります。私はまだ、子どもに愛着があるのかもしれません。
家族のゆくえは金しだい
私がマレーシアに駆けつけることができなかったのは、英語のほかに旅費のこともありました。
羽田空港からエアアジアで7時間でクアラルンプールへ到着。私の暮らす町から羽田までは4時間ちょっと。
前に渡航したときは、空港まで娘が迎えに来たから観光できましたが、ひとりでは旅に慣れていないので無理だったのです。
お金があれば、現地で通訳なりコーデネーターを雇うことができるかもしれない。
そう考えると、『家族のゆくえは金しだい』は言い得て妙ですね。
家族は演じるもの?
本のほうに話を戻しますね。
最後に著者はこれまでの家族観と、これからは違うと述べています。
- 家族には気を遣わなくてもいい、家族だから無償の愛をそそぐべきという幻想はこれまで女性の自己犠牲に成り立ってきた歴史があること。
- これからはSNSが家族の重要なツールとなり、距離があるからこそ心理的には近くなることも
家族は、生々しい感情をやりとりするのではなく、よそよそしいくらいの言葉遣いで接するほうが長く続くのかもしれない。
そんなふうにも書いてあって、ちょっと気持ちが落ち着きました。
今日の教訓
親とは因果なもので、愛着と愛情をはき違え、子どもに迷惑をかけずにはいられない存在かもしれない。 そんなことを信田さよ子著「家族のゆくえは金しだい」を読んで感じました。
スポンサーリンク